日本では中小企業の事業承継が大きな課題となっており、多くの企業が後継者不在の問題に直面しています。中小企業庁のデータによると、今後10年間で約245万社が後継者不足に直面し、そのうち約127万社が廃業の危機にあるとされています。このような状況の中で、相続とM&A(Mergers and Acquisitions:合併・買収)は密接に関連するテーマとなっています。
1. 相続とM&Aの基本的な関係
相続とは、故人の財産や負債を法定相続人が引き継ぐ制度です。一方、M&Aは企業の合併や買収を通じて経営権を移転する手法です。事業承継の手段として、相続による承継とM&Aによる承継は異なる性質を持ちますが、いずれも事業の継続を目的とする点で共通しています。
相続による事業承継は、主に親族が経営を引き継ぐ形となり、後継者の育成や相続税の問題が生じます。一方で、M&Aによる承継は、親族外の第三者に会社を譲渡することで事業の継続を図る手法です。
2. 相続による事業承継の課題
相続を通じた事業承継にはいくつかの課題があります。
(1) 相続税負担
企業オーナーの相続において、最も大きな問題の一つが相続税です。企業の株式は資産価値が高いため、相続税の負担が重くなりがちです。納税資金の確保が難しい場合、事業の継続が困難になるケースもあります。
(2) 後継者の適性
親族が必ずしも経営能力を持っているとは限りません。後継者が適切な経営スキルを持たない場合、事業の継続が難しくなる可能性があります。
(3) 経営の分散
相続により株式が複数の相続人に分散すると、意思決定の遅れや経営方針の対立が発生することがあります。これにより、企業の安定性が損なわれるリスクがあります。
3. M&Aによる事業承継のメリット
M&Aを活用した事業承継は、相続による承継と比較して以下のようなメリットがあります。
(1) 事業の継続性の確保
適切な買い手を見つけることで、事業の継続が可能になります。特に同業他社や成長意欲のある企業が買い手となれば、従業員の雇用や取引先との関係も維持しやすくなります。
(2) 相続税の回避
M&Aによって事業を売却することで、相続税の負担を軽減できます。株式を売却して得た資金は相続資産としてのリスクを低減するため、相続税の問題を回避しやすくなります。
(3) 経営の専門性を活用
買収企業が経営ノウハウを持っている場合、企業の成長を加速させることができます。特に業界経験が豊富な企業に譲渡することで、事業の発展につながる可能性があります。